はじめに

昨今の電力消費は増加の一途を辿り、とくに夏や冬の特定の時間帯に電力のピークが発生します。現在、ピーク時の負荷に対応するためのインフラ整備や電力供給が特に求められ、こうしたエネルギー需要の増加とピーク負荷の問題のソリューションとなる一つに挙げられるのがピークカットです。

 

1. エネルギー需要の増加とピーク負荷の問題

■ エネルギー需要の増加

電力需要の増加はなぜ起こっているのか、主に3つの要因があります。

一つ目は経済成長で、世界的な経済成長に伴い、工業、商業、家庭での電力消費が増加していることがあります。特に発展途上国では、都市化や産業化により急激にエネルギー需要が高まっています。

二つ目は、デジタル化と技術革新(IoT)やAI(人工知能)などの技術の普及によりデータセンターやサーバーの需要が急速に増えたことで、これに伴い電力消費が増加していることです。
そして、三つ目には気候変動対策が挙げられます。日本では、2023年に開催されたCOP28以前からさまざまな再エネ導入拡大のための取り組みが進められている一方で、電動車や冷暖房に利用するヒートポンプなどの新しいエネルギー消費の形態も増加しています。

■ ピーク負荷の問題

さらに、ピーク時の需要も問題です。一年を通じて特定の時間帯(例えば夏の午後や冬の夜間)に電力需要が急増しますが、この時間帯に電力供給が追いつかないと、停電や供給不足が発生する危険があります。このようなピーク負荷に対応するために送電網や発電所のインフラを強化する必要がありますが、これには多大なコストが伴います。さらに、発電所の運転が不安定になることもあります。

2. ピークカットとは?ピークカットの定義

ところで、ピークカットとは、特定の時間帯における電力消費のピークを抑えることを指します。これにより電力供給の安定性が向上し、送電網への負担が軽減されます。また、電力供給は瞬時に需要に応じなければならず、各電力会社においてはピーク時の供給不足がリスクを高めていることから、蓄電池によるピークカットは需要と供給のバランスを取ることでリスクを軽減させ、エネルギーの効率的な利用を促す役割があるのです。

3.蓄電池の役割とその重要性

蓄電池は、需要が低い時間帯に電力を蓄えつつ、需要が高まる時間帯には放出してピークを平準化する役割を果たすことで電力供給の安定性を向上することができるため、需要と供給の調整を担っています。この技術によるエネルギー効率の向上および再生可能エネルギーの利用を促進することの他に、天候に依存するため再生可能エネルギーは発電量が不安定となりがちですが、蓄電池はこれを補完し、余剰電力を貯蔵して必要な時に使用することで効率的な利用を促進します。

さらに、需要者側にとって最大のメリットとなるのは利用料金が大幅に抑えられる、という利点も。

ピーク時の電力消費を抑えることによって電力料金の平準化が叶うため、一度上がるとその後は下がらない高額な電力(最大デマンド)を避けられ、全体の電気料金を削減することができます。特に企業にとっては、コスト効率の向上が重要です。

他方、日本の電源構成の7割以上が火力発電によって賄われていることから、蓄電池を使用することによって再生可能エネルギーの利用が進み、その結果として化石燃料依存が減少しCO2排出量の削減にも貢献できるため、環境への配慮にも適しています。

 

4. “もしも”の時の電力供給の安定性

そして、何より蓄電池は停電時にも電力を供給できるため、重要なインフラやサービスの継続性を確保するという点で有力視されます。災害時など、特に病院やデータセンターなどの重要施設での電力供給の安定性が高まるほか、高層ビル等のエレベータ稼働の是非によっては人命に係わるという重要な場面での活躍が期待されるからです。

 

まとめ

エネルギー需要の増加とピーク負荷の問題は電力供給の安定性に大きな影響を与えています。

その中で、蓄電池は、エネルギーの効率的な利用や再生可能エネルギーの活用を促進し、その結果コスト削減や環境保護にも寄与していることから、持続可能なエネルギーシステムとしての実現が期待されています。